『完訳 7つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー著、フランクリン・コヴィー・ジャパン訳、キングベアー出版)は、話し方や時間術といった個別のテクニックを試しては元に戻る人が、行動の土台になっている原則の側から立て直すための一冊である。長い付き合いを引き受けられる人に向き、今夜すぐ効く手順を探している人には向かない。この一枚では、向く条件・向かない条件と読む順までを鑑定する。
この本が向く人
この本が窓口で選ばれる典型の症状は、対症療法の乗り換え疲れである。会話の本で会議を乗り切り、手帳術で予定を組み直し、それでも数か月で元に戻る。直したい場所が一つではなく、仕事・家庭・自分への評価のあちこちで同じ癖が顔を出す。そうした人に、個別の技術ではなく、その下にある原則から扱う本書の射程が合う。
条件にすると次の三つになる。
- テクニックの本を二冊以上試したが、効果が続かなかった
- 悩みが一つに絞れず、生活の複数の場面にまたがっている
- 数週間から数か月の実践を前提にした本と、途中で投げずに付き合える
二つ以上に心当たりがあれば、向く側と考えてよい。
この本が向かない人
鑑定の核はこちらである。
第一に、今夜すぐ使える手順が欲しい人には向かない。原則の説明が厚く、明日の会議を乗り切る台本のような道具は出てこない。締切が目の前にある症状には、もっと狭く速い本が合う。
第二に、解決したい悩みが一つに絞れている人にも向かない。「雑談が続かない」「机が片付かない」のような単一の症状なら、その領域の一冊のほうが早く、生き方全体を扱う本書では遠回りになる。
第三に、抽象度の高い記述が続くと手が止まる人は、前半で失速しやすい。具体例より先に考え方の説明が積み上がる構成だからである。
空回りの型も書いておく。読み終えた満足が実践を置き換え、名著を読んだという記憶だけが残る。射程の広い本ほど起きやすい副作用である。
扱う範囲と扱わない範囲
扱うのは、行動の優先順位の付け方、周囲との協力関係の作り方、自分の軸の持ち方といった、生き方の原則の層である。個別の場面のセリフ、業界別の仕事術、道具の使い方は扱わない。また、続く不眠や長い気分の落ち込みのような診断域の不調は、この本ではなく専門機関の領域である。
読み方の選択
通読前提の本である。章ごとに独立した実用書と違い、前の内容が次の内容の土台になる構成のため、気になった章だけの拾い読みでは効きにくい。ただし一気に読み切る必要はなく、自分の内側を扱う前半までをひと区切りにするとよい。
最初の10分は、まえがきと第一部の冒頭にあてる。ここでこの本の言葉遣いが自分に読めるかどうかが分かる。読めないと感じたら、そこでやめてよい。挫折ではなく、体質に合わなかったという記録が一つ手に入ったことになる。
似た本との違い
『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』(グレッグ・マキューン著、高橋璃子訳、かんき出版)は、引き受けすぎを減らすという一点に絞った本である。症状がそこに絞れているなら、本書より速く効く。詳しくは『エッセンシャル思考』はどんな人向けかで鑑定している。
『夢をかなえるゾウ1』(水野敬也著、文響社)は、同じ「行動して身につける」型を物語仕立てで渡す本である。理論書の厚みで止まってきた人は、あちらが入口になる。鑑定は『夢をかなえるゾウ』はどんな人向けかにある。
この本の前後に読むもの
買う前の段階で、書名ではなく症状から選び直したいなら、自己啓発本の選び方が地図になる。症状が時間の側に寄っているなら、時間に追われる感覚に効く一冊の処方箋を先に見てから戻ってきても遅くない。この本を選んだ場合は、前半のひと区切りを読み終えた時点で、続けるかどうかをもう一度決め直せばよい。